新潟駅南口「アイコニックタワー」竣工
前例なき挑戦を振り返る
~新潟駅南口西地区新潟都心地域 優良建築物等整備事業②~


2025年6月、新潟では他に類をみない、高度な免震機能を備えた地上30階建てのタワーマンション「アイコニックタワー」が新潟駅南口に完成した。これは福田組にとって、「超高層×免震×PCa※工法」という前例なき挑戦に取り組んだ結果。社内外から集まった経験豊富な人材はもちろん、初めて見る部材や施工方法に果敢に取り組んだ若き福田組社員たちも多くいる。この挑戦を終えて今感じていることを、それぞれのテーマに沿って社員に聞いた。
※PCa:プレキャストコンクリートの略。PCa工法とは、あらかじめ工場でコンクリート構造部材を製造し、現場にて組み立て完成させる、工期短縮が期待できる工法。
PROJECT MEMBER
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堀江 隆志
新潟本店 建築部 工事部
1984年入社。統括所長として対外的な交渉も含め、工事全体を俯瞰し、安全・品質・スケジュールを管理。
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佐藤 勉
新潟本店 建築部 工事部
2008年入社。複雑かつ難易度の高い工事において工程管理と安全管理を担当し、現場の責任者として活躍。
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川上 健介
新潟本店 建築部 工事部
2005年入社。大規模工事に対応するため副所長として所長をサポート。マンション棟を中心に工程・予算を管理。
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荻原 隆義
新潟本店 建築部 工事部
2006年入社。副所長として駐車場棟を主とし、現場がスムーズに運営できるよう安全・予算・発注・工事の進捗を把握。
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河内 舜哉
新潟本店 建築部 工事部
2016年入社。マンション棟では躯体工事、オフィス棟では躯体~内装、外装、工程管理を担当。
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八島 倫太良
新潟本店 建築部 工事部
2017年入社。工事の運営では、マンション棟の内装工事を担当。施主、設計との会議にも参加。
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石井 美香
新潟本店 建築部 工事部
2018年入社。協力会社の職人を束ねて、マンション棟でのコンクリート打設をはじめ施工管理を担当。
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小林 茉柚子
新潟本店 建築部 工事部
2019年入社。外構工事を担当。 今後、オフィス棟の内装工事にも従事予定。
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赤井 涼真
新潟本店 建築部 工事部
2023年入社。同年9月より当現場に着任。同現場で先輩たちの指導を受け、今年は新入社員の指導役となる。
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田辺 小鉄
新潟本店 建築部 工事部
2025年入社。7月から同現場に配属され、写真撮影や資料作成、最近では朝礼の司会も担当。
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若槻 太志
新潟本店 建築部 工事部
2025年入社。7月から同現場に配属され、写真撮影や資料作成、最近では朝礼の司会も担当。
※所属および掲載内容は2025年7月取材当時のものです。
多くの作業員さんの尽力と、
根気強くまとめ上げた
福田組の若い力
当現場には、所長経験を重ねたベテラン社員が4名と、未来の福田組を担う若手社員が多く配属された。総責任者である統括所長の堀江は、「現場はチームで動かしている。我々だけでは何もできない」と言う。この堀江に加え、工事所長・副所長のもとで現場管理を任される入社9年目の八島と7年目の小林が、協力会社との連携を振り返る。
新潟本店 建築部 工事部 八島倫太良:
1フロアごとに同じ作業を上へ上へと繰り返すマンション現場の良いところは、作業員さんの要望を活かせるタイミングが何度もあることです。特に今回の現場は30階建てなので、それが29回あったことになります。作業員さんがどこを気にするのかも徐々に分かってくるので、それを次のフロアの施工時に活かすようにしました。また、最大1日約250人の作業員さんと一緒に仕事をする現場はなかなかありません。今回信頼関係を築き上げた方々とは、今後どこかの現場で再会するでしょう。これもまた、今回の現場で得た大切な財産です。
新潟本店 建築部 工事部 小林茉柚子:
常々「作業員さんが仕事をしやすい現場以外に、良い現場はない」と思っているので、八島さんと同じく、「改善機会の多さ」がマンション現場の良さだと思いました。最初は作業員さんの数の多さに圧倒されましたが、その分「大きなチームをまとめる喜び」を体感することができました。私は外構工事も担当しており、この先、アイコニックタワー周辺の植栽工事も始まります。これまでとは別の、植栽担当の作業員さんが来られるので、また新たな気持ちで臨みたいと思います。
学びの宝庫だった、
PCa工法と市街地大規模現場
今回アイコニックタワーに採用したPCa工法は、多くの福田組社員にとって初めて経験する工法。また、新潟駅南口という中心市街地での大規模現場という面でも課題が多かった。そのため、若手だけでなくベテラン社員にも多くの学びがあったと言う。この現場唯一のPCa工法経験者であり、全体管理責任者である工事所長の佐藤に加え、そのもとで現場管理を任された入社10年目の河内と8年目の石井が、現場での学びと自身の成長を振り返る。
新潟本店 建築部 工事部 佐藤勉(工事所長):
「PCa工法経験者」として当現場に配置されましたが、実は私もこれが2回目。つまり、「福田組社員ほぼ全員が初めて」という状態からのスタートでした。3年前、私がまとめた全体工程表を見て、PCa工法特有の施工スピードの速さに皆驚き、「本当にできるのか?」と不安に思った者もいると思います。それでも作業を重ねるごとに理解を深め、スムーズに施工を進めてくれました。ただ、私としては、「伝え方はこれで良かったのだろうか」「もっと改善できたのではないか」と反省する点もあり、計画と現実を見比べ多くの気付きを得ました。これらの反省を含め、諸々の詳細情報をまとめて作成した「PCa工法資料」は、当社の大きな財産となるはずです。
新潟本店 建築部 工事部 河内舜哉:
これまで私が経験してきた現場は田んぼの真ん中や工業地帯でしたので、こんなにも人通りが多く、線路がすぐ側を通るこの現場は未知の世界でした。常に「見られている」という意識を持ち現場を美しく保つこと、飛散物対策は飛ぶ前提で物を見ることなど、「第三者への配慮・気配り」の意識が高まりました。初めてのPCa工法に関しては、検討段階での詳細な検討が重要であることを実感しました。佐藤工事所長を始め諸先輩方の動きを見てPCa工法を学ぶことができ、とても貴重な現場だったと思います。
新潟本店 建築部 工事部 石井美香:
全218戸という膨大な部屋数がある今回の現場では、自分が全ての施工場所を回って指示を出すことは現実的ではないため、作業員さんへ向けた資料を分かりやすく作ることを意識しました。写真と文章を用いて具体的な内容の資料を作ることで、質問される回数も減りました。「読む相手のことを考えた資料作り」ができるようになったように思います。内覧会には私を含め多くの若手社員が参加し、エンドユーザーの生の声を聞く貴重な経験をさせていただきました。「きれいだね」と言っていただけることが多く、安堵と喜びの気持ちでいっぱいになりました。
脈々と引き継がれる
福田組のリーダー像
当現場の副所長2名は、他現場での所長経験を重ねたベテラン社員。この2人と入社数年目の若手社員の間には、さらに入社10年前後の社員が4人いる。未来の福田組を担う若手社員は2人のリーダーを見て何を感じたのか。また2人のリーダーはさらに上の統括所長・工事所長を見て何を思うのか。副所長の川上・荻原と入社3年目の赤井が、自身と諸先輩方のリーダーの姿について振り返る。
新潟本店 建築部 工事部 川上健介(副所長):
私はこの現場で、自身の技術的な知識の棚卸と、新たな「所長像・リーダー像」を学ぶことができました。特に佐藤工事所長は、自ら動き「ほら!よく見ておけよ!」というスタイル。PCa工法の工程管理・施工管理を中心に、多くのことを学ばせていただきました。また、どの現場でも同じですが、工程の精査は難しく、実際の作業を見て初めて、自分の見通しの正しさ・甘さが分かる「答え合わせ」ができます。「もっとこうすれば良かった」と思う点は必ず出てくるので、それを次の現場で活かす。これを繰り返すことで、精度が高まっていく。このような工程管理に対する感覚も、今回の現場の中で磨きをかけられたように思います。
新潟本店 建築部 工事部 荻原隆義(副所長):
この現場は、1つの敷地に3つの建物が建設される現場です。そこまで敷地は広くないため、1つの工事で工程が狂うと他の建物にも影響するような状況で工事を管理していました。常に危機感が絶えない状況が長く続きましたが、全体を俯瞰して構える堀江統括所長、常に近隣環境を意識し、率先して動く佐藤工事所長、1つ先輩で非常に博識な川上副所長との「何事も相談できる環境」が私の励みになりました。今までは自分の考えにとらわれがちでしたが、この関係性が物事の考え方を幅広くしてくれました。
新潟本店 建築部 工事部 赤井涼真:
2023(令和5)年に入社して、初めて配属された現場がここでした。川上さんと荻原さんという経験豊富なリーダーのもと、自分と年も近い先輩が4人もいて、諸先輩方の言動を見て吸収すべきことがたくさんあった現場でした(もっと吸収すべきだったと反省)。また、入社3年目となった今年は新入社員2名の教育係にもなり、指導を通して自身を見直すことができています。今後はここで見聞きした多くのリーダー像を、自分の将来像に重ねていきたいです。
なりたい自分をイメージして、
今できることに全力で取り組む
今年は当現場に、2名の新入社員が配属された。7月に配属されて以降、朝礼の司会や記録のための写真撮影と資料作成を主に担当している。福田組の中でも注目現場とされるこの大規模現場に、入社直後に携わることになった2人。2025(令和7)年入社の田辺と若槻に、素直な感想と今後の抱負を聞いた。
新潟本店 建築部 工事部 田辺小鉄:
新入社員研修で訪れた、今注目のこの現場に配属されたことを光栄に思います。大きな現場ですし、当社の先輩も作業員の方も厳しい方が多いのだろうと覚悟していましたが、皆さん優しく、ユーモアのある方も多くて安心しました。今は自分のことで精一杯になってしまっているので、もっと現場全体のことを見られるようになりたいです。頭の中に入っている作業内容も今は「今日だけ」ですが、せめて1週間くらいは頭に入れて、今日やったことが次どのようにつながっていくのかを理解して動きたいです。現場全体を見ることができ、先輩方から言われる前に気付き動くことができる、理想の自分に近づけるよう努力します。
新潟本店 建築部 工事部 若槻太志:
入社前、いつも通学時に見ていたこの現場に携わることができてうれしいです。今は圧倒的に知識と経験が足りないため、作業員さんから聞かれたことを先輩方に伝えて、答えを持って帰って回答する、いわゆる「伝言係」にしかなれていませんが、これを通して得た知識は全て覚えて自分のものにしていきたいです。また、協力会社ごとに作業員さんを束ねる「職長さん」が20~30人いらっしゃるのですが、まずは皆さんの顔と名前を覚えること。そして、先輩方が常にされているようにコミュニケーションを密に取り、少しでも信頼関係を築けるように頑張ります。
2026(令和8)年2月
ついにプロジェクト完了へ
駐車場棟とマンション棟(アイコニックタワー)の竣工・引き渡しを経て、残るはオフィス棟の竣工のみとなったこのプロジェクト。約200世帯がアイコニックタワーでの暮らしを始める中での隣接工事となるため、さらに安全に留意した管理が求められる。オフィス棟竣工は、2026(令和8)年2月予定。同年4月には、オフィス棟内に専門学校の開校も予定されている。3年半の長きにわたるプロジェクトが完了し、この場が多くの人でにぎわう日はもうすぐそこだ。
このプロジェクトについては、コーポレートサイトの FUKUDA JOURNAL もぜひご覧ください。
工事概要
工事名 | 新潟駅南口西地区優良建築物等整備事業に係る施設建築物新築工事 |
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場所 | 新潟市中央区花園1丁目地内-1 |
工期 | 2022年9月~2026年2月 |
発注 | 株式会社国際総合計画・日生不動産販売株式会社共同企業体 |
設計 | 株式会社クレイズプラン |
面積 |
マンション棟 オフィス棟 駐車場棟 |
構造 |
マンション棟 オフィス棟 駐車場棟 |
新潟本店 建築部 工事部 堀江隆志(統括所長):
当社にとって稀有な内容と規模の一大プロジェクトであり、新潟駅南口の新たなまちの顔をつくる当プロジェクト。当社社員だけでなく、協力会社の作業員さんたちも大変優秀な方々が集まってくださいました。施工管理者である我々福田組はまとめ役であり、実際に作業に当たってくださるのは協力会社の皆さんです。当社の若手社員を中心に、良いチームワークで取り組めたと自負しています。また、新潟駅周辺再開発の一環として国や新潟市の視察も多くあり、注目度の高さを感じています。来年のオフィス棟竣工まで、気を引き締めて管理を続けます。